引きこもりの状態がつづくと、生活リズムが崩れる人がほとんどです。日中に仕事・学校などのスケジュールが入らないのですから、むしろ昼夜逆転するのは当然でしょう。
つまり、「引きこもりが悪化したから昼夜逆転になった」「昼夜逆転を治せば引きこもりも解消できる」ではなく、昼夜逆転でお悩みの方が大切にするべきポイントは、根本の原因である引きこもり状態の克服です。
引きこもり状態から抜け出して社会復帰を果たせば、自然と昼夜逆転現象も治ります。そこで今回は、引きこもりの人が昼夜逆転になる原因・社会復帰に向けて昼夜逆転を治す方法について解説します。
お子様の昼夜逆転を解消したいとお考えの親御さんは、ぜひ参考にしてください。
目次
引きこもりで悩む本人や子どもが引きこもりのご家族が、「引きこもりをなんとか解決したい」と考えるのは当然のことです。
ただ、行きづまった現状を何とか改善しようとするとき、誰しもが「わかりやすい問題点・簡単に解決しやすそうな課題」をピックアップして「解決に向かって動き出したつもり」になってしまうという『落とし穴』がある点に注意しなければいけません。
引きこもりと昼夜逆転の関係も、まさにこれが当てはまります。
わかりやすくお伝えすると、引きこもり状態の本人を目の前にしたとき、本人が抱えている根本的なこころの問題よりも、外から観察しやすい「昼夜逆転現象」の方が問題点として議題に上げやすいということです。
これでは、本当に解決しなければいけないのは「引きこもり状態がつづく根本原因」であるはずなのに、少しの努力で改善できそうな「昼夜逆転現象」改善に現実逃避してしまっているだけでしょう。
ですから、引きこもり状態の本人が昼夜逆転になっているのなら、「昼夜逆転を治せば引きこもり状態が治る」という考え方ではなく、「引きこもりの根本問題を解決すれば自然と昼夜逆転も解決する」という視点を大切にしてください。
引きこもり状態改善のポイントは、外の世界との繋がりを作ることです。
たとえば、社会が活動的な日中に引きこもりの子どもと一緒に買い物に行ったり、意欲的に身体を動かす機会を作ったりするだけでも意味があります。
ただ、長らく引きこもり状態がつづいている人のなかには、「外に出たいけど恐怖心が勝る」「近所の人に日中歩いているのを見られるのが嫌だ」などと不安を覚える人も少なくないはずです。
お子様を育てるのに2人の親御さんだけでは足りず、他のケースを知る機会がなくきっかけ作りも難しいです。そこで、引きこもり改善の実績・ノウハウ豊富な第三者の助けを借りる選択肢は、新たなきっかけや動き出す理由を見出す重要な役割を持ちます。
引きこもりであることを周りに知られたり、引きこもり問題解決を第三者に頼ったりすることは恥ずかしいことではありません。
ニュースタートでは、引きこもりでお悩みのご本人のペースに合わせた多様なサポート体制を用意しているので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
繰り返しになりますが、昼夜逆転を治したからといって引きこもり状態を克服できるわけではありません。
ただし、昼夜逆転を治せば、引きこもり状態から抜け出した後の社会復帰をスムーズに進められるという点は大切にするべきです。
そこで、まずは引きこもり状態の人が昼夜逆転しやすい理由について考えてみましょう。
代表的な原因として、次の4点が挙げられます。
それでは、引きこもり状態の人が昼夜逆転に陥りやすい理由について、それぞれ具体的に説明します。
引きこもりのお子様が家族と同居している場合、自分が引きこもり状態であることに対して罪悪感・責任を感じていることが多いです。
すると、日中家族が活動している時間帯は部屋から出てきにくくなります。
などのように、日中は部屋でやることがないので眠るという悪循環に陥り、「家族と会いたくない」という気持ちが昼夜逆転を引き起こすことになります。
引きこもり状態の人のなかには、「日中何もせずに外を出歩いていること」を誰かに知られるのが嫌だという人も少なくないでしょう。
このパターンの人は、「働くこと・学校に行くことが普通」「自分はやるべきことを何もできていない」という思い込みが強い傾向があります。
すると、日中は外出するのではなく自室に引きこもりやすくなるので、結果として夜に眠れず、生活リズムが乱れます。
引きこもり状態の人のなかには、日中活動しないので体力が余って夜に眠れないというケースもあります。
健康的な生活リズムで生活していると、日中に身体を動かすために夜は自然と眠くなるはずです。しかし、自宅に引きこもっていると体力を使うことがありません。
また、眠くなったときにいつでも寝られる環境にあるため、一般的な生活リズムとは異なる生活習慣が身についてしまいます。
なお、引きこもりで昼夜逆転している人のなかには、夜中にネットゲームに熱中しているケースが少なくありません。ネットゲームは夜中の方が人は集まりますし、Web上で人とコミュニケーションをとれるために引きこもり状態でも一定の満足感を得やすいものです。
現実問題への直面を避けて引きこもり状態がつづき、ネットゲームに熱中してのめり込むと、昼夜逆転だけではなく睡眠障害を発症するリスクもあります。
このケースでは、ネットゲームに代わって打ち込めるものを見つけるのがポイントになるでしょう。
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引きこもりの人が昼夜逆転の状況に陥ってしまうと、そこから抜け出すのは簡単ではありません。
なぜなら、理由があって引きこもりをしているわけですが、その引きこもり状態が「昼は寝る・夜に起きる」には最適の環境を生みだしてしまっているからです。
このように、引きこもり状態の人にとっての心地良いサイクル(客観的に見れば「悪循環」)が成立してしまっている以上、ここから自力で抜け出すためには誰かからのサポートが不可欠でしょう。
ですから、引きこもり状態がつづいて昼夜逆転の生活リズムが出来上がってしまっている場合は、引きこもり支援に長けた第三者の助けを頼ることも選択肢の1つです。出来上がっているサイクルに終止符を打つタイミングは早い方が良いので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
引きこもり状態から抜け出して社会復帰を果たした後は、社会の流れに順応しなければいけません。
そのためには、今の段階から昼夜逆転を治して社会復帰後の生活スタイルを作りやすい環境を整えるのがポイントです。
たとえば、昼夜逆転の治し方には次のような手法があるので、実践できそうなものに取り組んでみましょう。
それでは、昼夜逆転の治し方について、それぞれ具体的に説明します。
昼夜逆転の1つ目の治し方は、「朝に起きて太陽の光を身体に浴びる」というもの。
まず、朝に太陽の光を浴びれば、光の刺激によってセロトニンという神経伝達物質が分泌されます。セロトニンは、ドーパミン・ノルアドレナリンの分泌量を調整してこころを安定させる役割を担うものです。
朝に日光を浴びればセロトニンが分泌され、気持ち良く毎日を過ごせるようになります。
次に、朝に日光を浴びることで、睡眠誘発物質であるメラトニンというホルモンの分泌量が抑えられるのもポイント。つまり、太陽の光がメラトニン分泌量を抑制して体内時計をリセットしてくれるということです。
ですから、起床後部屋のカーテンを開けて日光を取り込むだけで、部屋が明るい雰囲気になるだけではなく、身体を「起きる」状態に誘導してくれます。
昼夜逆転の状態からいきなり朝起床のサイクルに戻すのは簡単ではないので、たとえば「最初は午後0時に起きる」というように小刻みに目標を設定してみましょう。
参考:
メラトニン | e-ヘルスネット(厚生労働省)
朝起きと健康の関係|日比谷 有楽町の心療内科 精神科 パークサイド日比谷クリニック
昼夜逆転の2つ目の治し方は、「寝だめをしない」という方法です。毎日の活動時間総数・睡眠時間総数は一定に保ちましょう。
なぜなら、そもそも人間は寝だめができない生き物だからです。
たとえば、「今日12時間寝たから明日の夜まで起きておこう」ということはできません(無理をして起きつづけたところで身体を壊すだけです)。
ですから、「一定の活動時間に対して一定の睡眠時間が必要だ」というルール性を理解して、できるだけ毎日の睡眠時間を同じに保つように心がけることも大切です。
参考:
わが国におけるSocial jetlagの実態と心身の健康に及ぼす影響の検討
Does extra sleep on the weekends repay your s | EurekAlert!
昼夜逆転の3つ目の治し方は、「起きている間は積極的に身体を動かす」というものです。
睡眠は体力を回復するために必要なもの。つまり、体力を使わなければ眠りにくくなるのも当然ですし、起床時に身体を疲れさせれば自然と眠りやすくなるはずです。
たとえば、普段引きこもっているのなら体力が落ちているので近所を少し散歩するだけでも良い運動になるでしょう。また、どうしても外出が怖いなら、自宅の階段を上り下りするだけでも差し支えありません。
「朝起きる→運動する→疲れて夜に眠る→朝目が覚める→昨日よりも多めに運動する」という循環を作り出せば、昼夜逆転が治るだけではなく、社会復帰のために必要な体力も戻るでしょう。
ここまで紹介した3つの治し方を実践しても昼夜逆転が戻らないときには、自律神経に不調が生じている可能性があります。
たとえば、次のような病気・障がいを抱えていることもあるので、早期に医療機関等までお問い合わせください。
参考:
自律神経失調症(じりつしんけいしっちょうしょう)
うつ病|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省
子どもが引きこもりで昼夜逆転の生活をしていると、親御さんが不安になるのは当然です。
ただ、何度もお伝えしている通り、昼夜逆転を治したからといって引きこもりが解決するわけではありません。なぜなら、分かりやすい改善が見える昼夜逆転問題だけに取り組むことは現実逃避でしかないからです。
引きこもりのお子様がいる親御さんが大切にしなければいけないことは、根本原因である引きこもり対策に向き合うことです。
将来的な社会復帰も視野に入れるために、次のポイントを意識して子どもの引きこもり改善のサポートをしましょう。
それぞれ、参考にしてください。
たとえば、引きこもりの子どもと一緒に朝ごはんを食べる習慣をつけてみるのも良いでしょう。
毎朝家族一緒に食卓を囲むためには、引きこもりの子ども自身も朝起床する必要があるので、生活リズムを整える助けとなります。
また、美味しい食事を用意すれば、部屋から出る動機付けにも。主食・主菜・副菜をしっかり食べられると、健康にも良いはずです。ただ、引きこもりの状態次第では、家族とコミュニケーションをとること自体が難しいこともあるでしょう。
無理強いをすると逆効果になるリスクもあるので、食事を一緒にとるかどうかは子どもの自主性に委ねるのがポイントです。
家族団欒の場を楽しい雰囲気にすれば、引きこもり状況が改善する可能性があります。
たとえば、家族皆でテレビを観たり、皆が自分の話を自然とできる環境ができたりすると、引きこもりの子どもが部屋から出てくる回数が増えるでしょう。
やがて家族皆で外出する機会をもてたりするといった、生活リズムが家族と一致すれば自然に引きこもりを克服できることも。たとえば、子どもの興味に合わせて旅行するのも動機としては「あり」です。
もっとも、家族に対する負い目が強すぎると、家族団欒の空間が引きこもりを助長するリスクと隣り合わせだという点には注意しなければいけません。
ですから、引きこもりの子どもを前向きにするためには、家族だけの判断で対策を練るのではなく、引きこもり対策のノウハウがある第三者に相談するのがおすすめです。
引きこもりの子どもとコミュニケーションがとれる状況なら、子どもの話をよく聞いてみるのも大切なことです。
たとえば、「何を不安に感じているのか」「何が怖いのか」「将来のことをどのように考えているのか」など、子ども自身の考えを素直に受けとめてみましょう(安易に叱ったりするのは逆効果です)。
自分ひとりで抱えている悩みを誰かに相談できるだけでも、精神的なストレスは軽減されるはずです。
ただ、実は親子間で踏み込んだ話をするのは簡単ではありません。たとえば、反抗心・後ろめたさなどの感情が入り混じって、「親にだからこそ話せない」という子どもがいるのも当然です。
ですから、引きこもり問題について子どもと話をする際には、親子間の関係性を客観的に分析したうえで、親が話を聞くべきか否かを慎重に判断しなければいけません。
第三者のアドバイスを参考にして、親として何ができるかを考え直してみましょう。
子どもの昼夜逆転を根本から改善する場合は、「日中の用事」を作り、外とつながるきっかけを作りましょう。
大切なのは、昼夜逆転を改善するより、その原因となっている引きこもりの改善のはず。つまり、外とつながるきっかけを作り、引きこもり状態を少しずつ改善できると、自然に昼夜逆転も改善できるわけです。
そのため、大きな目標を立てるより、まずは簡単に実践できる以下の内容がおすすめです。
昼夜逆転という表面にある原因だけに捉われず、その背景にある『引きこもり』を改善し、根本的な解決を目指してください。
さいごに、引きこもり状態の人が昼夜逆転になったときのよくある質問をQ&A形式で紹介します。
意外に見落としやすい項目ですので、チェックしてみてください。
不登校で生活リズムが崩れると、日中に寝ていて夜中に起きるというのはよくあることです。
子どもが不登校で昼夜逆転をしているからといって、「病気に違いない。病院に連れて行かなければいけない」と強迫観念に駆られる必要はありません。
ただし、思春期の時期に不登校で眠ってばかりの子どもについては、まれに突発性過眠症・ナルコレプシーを発症しているケースがある点に注意が必要です。
たとえば、会話中にいきなり眠ってしまうような睡眠発作の症状が見られる場合には、すみやかに専門医までご相談ください。
参考:
過眠症で悩む中学生高校生の皆さんへ | なるこ会 NPO法人日本ナルコレプシー協会
お子様がどのような生活スタイル・人生プランを希望しているか次第ですが、一般的に、昼夜逆転には次のようなデメリットがあるといわれています。
たとえば、現在の昼夜逆転生活が肌に合っていると感じている人でも、一度生活リズムを戻してみてはいかがでしょうか?想像している以上に気分や身体がすっきりして快適な時間の過ごし方ができる可能性があります。
もちろん、「昼夜逆転=悪」というわけではありませんが、生活リズムが整った状態を経験してみると新たな再発見があるかもしれません。
昼夜逆転の治し方として、「次の日の夜まで寝ずに徹夜をして無理矢理就寝時間を調整する」という荒療治が提案されることがあります。
ただ、先ほど紹介したように、人間の身体は寝だめ等ができない構造です。一定時間活動をしたらそれに相応した睡眠時間が必要となります。
つまり、徹夜をして生活リズムを整えようとしても、かえって疲れが溜まって結局次の日に予定時刻に起床できず、結果として昼夜逆転が治らないという事態にもなりかねません。
基本的に、昼夜逆転を治すなら以下の健康的な正攻法が最適です。
引きこもり状態の人が昼夜逆転状態におちいるのは当たり前。大切なのは、昼夜逆転を治すことではなく、引きこもり状態の解決策を検討することです。
引きこもり状態から脱却できれば、社会生活を営むために必要な生活リズムは自然と習慣化するでしょう。
そして、引きこもり状態から脱却するためには本人の事情を汲み取った対策に踏み出すのがポイントです。
ですから、本人・ご家族だけでは有効な解決策が分からないのなら、すみやかに引きこもり支援に力を入れている第三者機関までご相談ください。対策に踏み出すタイミングが早いほど、引きこもり状態はスムーズに解決できるでしょう。
認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。
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