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引きこもり支援30年は失敗の歴史!厚生労働省の支援マニュアルに必要なこと

これからの「引きこもり支援」を考えていくためには、何が必要でしょう?
まずは引きこもり支援の30年の歴史を、検証して欲しいのです。

厚生労働省がマニュアル策定を発表

今年2023年5月に、厚生労働省が「引きこもり支援の初のマニュアルを策定する」と発表しました。

自治体の相談窓口などでの活用を想定しており、2024年度中の完成を目指すとのこと。

このマニュアル策定の進め方については、「当事者や家族、自治体から状況を聞き取る」とネット記事に書かれていました。

本当にそれで充分なのでしょうか?

引きこもり支援は30年の歴史がある

ニュースタートも含め、引きこもりの方々に対する様々な支援が始まったのは、1990年代です。

詳細は、書籍『コンビニは通える引きこもりたち』の第5章、「引きこもり支援のこれまでとこれから」の冒頭に書いてあります。

引きこもり支援は、1990年代から現在2023年まで、約30年の歴史があるのです。

しかし支援が行われているはずの30年で、引きこもりの人数は増加の一途を辿りました。

直近の調査では、引きこもりの推定人数は146万人にまで膨れ上がりました。

つまり、「この30年間、支援はうまくいっていなかった」と捉えるべきではないでしょうか。

留年生が増えた学校のような状態

コロナ前までの調査では、引きこもりの出現割合は15~39歳・40~64歳ともに1.5%前後です。

割合はほぼ同じで、人口が多い中高年の方が引きこもり人数も多くなる、というからくりです。

つまり常に一定割合の人が引きこもりになるということです。

『コンビニは通える引きこもりたち』の177ページで、この状況を学校に例えて説明しています。

一定割合の人が毎年入学してくるが、卒業していかない、留年する人がたくさんいるため、在籍人数がどんどん膨らんでいる。

新入学生をどう減らすかより、卒業システムの不備の方が問題だと書きました。

「信じて待ちましょう」で引きこもりが長期化する

今回出版した『引きこもりの7割は自立できる』では、この卒業システムの不備に影響したであろう考え方について書いています。

その一例が、「信じて待ちましょう」「まずは親子の対話を」という親へのアドバイスです。

どんなに待っても、自ら動き出さない人はたくさんいます。
一度失われた親子の対話を復活させるのはかなり大変で、不可能と思われるケースもあります。

全員に適したアドバイスではないのに、全員に当てはめて、上手くいかなければ「もっと待ちましょう」と更に時間を重ねます。

こうして終わりのない「待つ」をしているうちに、引きこもりが長期化していくのです。

変えられなかった長期化への流れ

「信じて待つ」が長期化を助長すると、二神は活動開始から間もない頃から訴えています。

例えばこの1998年のシンポジウムでも、「信じて待つは1年でいい」と言い、引きこもりがズルズル続く懸念を離しています。

25年も前から「信じて待つ」一辺倒ではダメだと思い、声は上げていたのですが、認知していただくには力不足でした。

ニュースタートに支援依頼が来た人の多くを、自立させることは確かにできました。

でも、ここまで引きこもりが増加・長期化する世間全般の流れを、変えることはできませんでした

そういう忸怩たる思いや反省から、今回の本の内容を決めたという経緯があります。

この30年間の引きこもり支援は失敗だった

今後の支援の在り方を考えるなら、社会がどうのという話に逃げずに、まずこの30年間に支援の失敗があったとちゃんと認めること。

これが、第一歩だと思います。

そしてきちんとこの30年の支援を検証し、なぜ失敗したのかを考え、同じ轍は踏まないようにしないといけません。

例えばこのマニュアルが「信じて待つ」という色合いが強い内容になると、どうなるでしょうか。

更に多くの人の引きこもりが長期化し、当然人数も更に増える―――

マニュアルの方向性によっては、そんな状況にもなりかねないわけです。

情報の広さは、横方向と縦方向がある

引きこもり支援の歴史30年分というと、相当な情報量があるはずです。

この30年のうちに、どんな支援が出て来たのか、または消えたのか、その効果はそれぞれどうだったのか

これは横方向の情報の広さと言えます。

そして、支援の効果はあまり短期的に見るものではありません

支援から10年後20年後どうなったのかという、縦方向の情報の広さもあります。

あえて10年前15年が経過した古い事例を紹介

書籍『引きこもりの7割は自立できる』でも、長く活動してきた団体として、この「縦方向の情報」は意識しました。

あえて最近の事例ではなく古い事例を選び、支援から10年後15年後どうなったのかを書いています。

そして成功事例だけではなく、うまくいかなかった事例も入れてあります。

こういった目線で、様々な支援の検証を行って欲しいのです。

「引きこもりでも生きていけるように」という支援でいいのか?

そもそもの大前提として、引きこもりという状況は、本人にとっては苦しいものです。

引きこもっていても苦しくないように、生きていけるように」というのも、1つの考え方でしょう。

ですが本のタイトルの通り、私たちの感覚では、7割の人は自立できるだけの力を持っています。

そういう人たちを、わざわざ苦しい引きこもり状態のままにする必要はないと思います。

まずは「引きこもりを解決できる支援」をちゃんと構築するべきではないでしょうか。

それがないので、「引きこもっていても生きていけるように」という、いわば後ろ向きな話に流れているように感じます。

まずは、ある程度の人が自立できる支援を用意すること。

それがあってなお、引きこもりを積極的に選択するのであれば、それはその人の自由と考える。

これが本来の順序ではないでしょうか

日本には、30年分の支援の歴史があります。

支援後から数十年という、長いスパンでの結果も見ることができます。

マニュアルには、その利点を十分に生かしていただきたいと思います。

引きこもり支援のマニュアル策定がどうなっていくのか、過去の失敗を繰り返さないか、今後を注視していく所存です。

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執筆者 : 久世 芽亜里(くぜ めあり)

久世芽亜里

認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。

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