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事例から見る『引きこもりの7割は自立できる』(2)

今回出版された「引きこもりの7割は自立できる」にある、12人の事例
このコラムでは、事例の後半6人の概略と、その趣旨をお伝えしていきます。

前半6人についてのコラムはこちら

「どうするんだって言われても、自分でも分からない」

仁くん(全て仮名)は大学を中退し、そこから8年引きこもりでした。

親子の会話はあるけれど、今後のことなど肝心な話はできない状況。
仁くんはお母さんの言葉ですんなり入寮し、自立していきました。

「第4章 『まず親子の対話から』という誤解」に掲載した事例です。
かなり長くなったため、この章の成功事例はこの1ケースのみです。

仁くんと親御さんの両方に引きこもり当時の話を聞けており、引きこもる親と子の両側からの目線、親子のすれ違いがよく分かる内容となっています。

本人が辛くて動けない時ほど、親は「何もしていない」と思って色々言ってしまう。
親が「信じて待つ」の体制に入ると、本人も「考えても辛くなるから」と何も考えなくなる。
親は「自分の意思を、話をしてほしい」と望んでも、本人は「言っても聞いていない」という経験から諦めて何も言わない。

「どうするんだって言われても、何も答えられない。自分でも分からないから
そうやってただ無言の状態が続いたこと。

これだけのすれ違いがあり、更に本人は親と話すのを諦めてしまっている
親がどう頑張っても、ここから親子の対話が成立させられるとは思えません。

そして仁くん親子は、今は以前より対話ができるようになっています。
親子の対話→自立という順序だと思われている方も多いでしょうが、仁くんはその逆のパターンです。

「まずは親子の会話を!」と必死になり、そこで足踏みしている親御さんに、ぜひ読んでいただきたい事例です。

「親子で話し合いができるようになりました」

第4章の、私たちは失敗事例と捉えている人です。

浩くんは退職後、5年間引きこもりでした。
中学以降、友人と呼べる人はいないようでした。

レンタルお姉さんが訪問するうちに、浩くんは会って話ができるようになりました。
でも会話が一方通行な感じはあり、寮で人間関係を築く練習をする方がいいタイプでした。

寮の話が出ると、浩くんは「ニュースタートの支援は受けずにバイトをしたい」と親御さんに話します。
親御さんから「本人の意思を尊重します」と連絡があり、訪問は終了しました。

何より象徴的だったのは、「親子で話し合いができるようになりました」というお礼の言葉です。
息子と会話できるのが嬉しい、という親御さんの気持ちが溢れていました。

1年後、浩くんはバイトは応募すらしておらず、家族以外の他者との接点も皆無
状況は引きこもりのままでした。
ただ親子の会話は変わらずできていたため、親御さんは満足しているようでした。

支援が途中終了となる理由で、「親子の会話ができて親が満足した」は、トップ3に入る多さです。
会話ができると嬉しくなり、自立に向けて強く押してせっかくの会話がなくなったら……という気持ちになってしまうのです。

親子の対話はないまま自立した仁くんと、親子の対話はできたが引きこもりのままの浩くん。
どちらもニュースタートではよく見るパターンです。

本ではさすがに書けなかった厳しいことを言います。
親御さんご自身の目の前の喜びと、我が子が自分の足で立つ未来、どちらを選びますか?

引きこもり、三者三様の幸せの追求

「第5章 引きこもり支援のゴールは自立である」の、3人の事例をまとめて解説します。

専門学校に7年在籍していた正くん。
大学を中退し10年引きこもりの尚くん。
退職して実家に戻り、半年引きこもりの紳一郎くん。

3人とも訪問支援から入寮し、無事に卒業して自立しました。

この章でお伝えしたかったのは、「引きこもり支援のゴールは自立で、本人の人生の、幸せの追求はそこから始まる」ということです。

そこで自立の次のステップがバラバラな3人を選びました。
1人はスタンダードに会社員、1人は田舎暮らし、1人は専業主夫です。

もう1つのポイントは、その継続性です。
全員がその暮らしを、10年ほど続けているのです。

つまり寮生活や自立生活を経て、「自分の人生をちゃんと選べる力がついていた」と言えます。

寮で様々な人に出会い、自分自身とも向き合い、働いて自分の市場価値も知り、具体的に行動し模索してきた結果でしょう。
リアルな成功体験と失敗体験の積み重ねで、自己理解と他者理解を深めてきたわけです。

引きこもりながら1人頭の中で考えているだけでは、いきなりこう上手くはいかなかったと思います。

私たちは単なる自立をしてほしいわけではなく、その人らしく生きて、幸せになってほしいと願っています。
自立は、「その人らしい人生」へのスタート地点に過ぎません。

何より、引きこもりの7割の人は、そのスタート地点に立てる人たちなのです。

家という密室が生まれる事件とは

最後の事例です。
大学中退から引きこもりになった、怜央くんです。

怜央くんは、ニュースタートの約30年の歴史の中でも、ニュースで流れる事件になった唯一の事例です。

何より怜央くんは、そんなに珍しくないタイプの引きこもりでした。
支援記録から見える人柄、怜央くんに実際に会ったことがある人の話からも、そう感じました。

つまりこの悲劇は、多くの家庭で起こりうるのです。

お母さんの直筆の手紙は、きちんと保管されていました。
執筆中に読みながら、涙が滲みました

このような悲劇を繰り返さないために、自分にできる最大のこと。
それは広くこの事例を知ってもらうことだと考えています。
今回出版のお話があり、「これ以上の場はない」と決心しました。

この事例の細かい中身を、ここに書くことはしません。
ぜひ本をお手に取り、この事例だけでも、通して読んでください
そして、どうすればこの悲劇を防げたのか、これからの引きこもり支援を考えてください。

私たちが見て来た引きこもりと呼ばれる人は、7割が自立できる、その力を持った人たちです。
そして怜央くんも、その7割に入る人だったはずなのです。

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執筆者 : 久世 芽亜里(くぜ めあり)

久世芽亜里

認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。

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