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西日本新聞「引きこもりの息子、業者頼った末…遺体で発見 『一体どうすれば』親の自問」によせて

本日の西日本新聞に、

「引きこもりの息子、業者頼った末…遺体で発見 『一体どうすれば』親の自問」

という記事がありました。

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/622211/

引きこもっていた息子さんを自立支援施設に預けたものの、自宅に戻った息子さんは家の手伝いすらしないようになり、再入寮を前に遺体で見つかったという、痛ましいケースです。

福岡県という、千葉のニュースタートからはかなり遠い場所のケースになります。
施設は愛知県とのことで、これだけではどこなのか全く判別はつきません。

ただ、このそう長くない記事からでも、推察できることはあります。
まずこの方は、2007年から2014年までの7年間、一度転職はしていますが、仕事が継続しています。

仕事が全くできないタイプではなかったように思います。
そして、「何のために仕事をするのか」と悩んでいたようです。

こういった哲学的な悩みは、ただ仕事をすれば答えが出るというものでありません。
この二つのキーワードだけでも、この方に必要だったのは就労支援ではない、もっと別のものだと想像できます。

この人には、ニュースタートが訴える「人生ののりしろ」のような、一見無駄に見えるものこそが必要だったのではないでしょうか。
こういった状況で、ただ就労を目指す施設に入れられ、母親に「働く姿が見たい」と言われれば、当然追い詰められます。

以前のような意味のない、苦役としか思えない、ただ働くだけの人生を求められていると感じるからです。
また父親の「成長して帰ってきたと思ったら、全く変わっていなかった」にも、大いに疑問を感じます。

父親が求める成長とは、しっかり仕事ができることだったのでしょう。
ですがこの人に必要な成長とは、もっと人生を幅広く考え、のりしろを作ることだった可能性があります。

成長の方向は、一つではありません。
その人その人に合った成長があります。

そもそも成長が必要なのかという疑問もありますが、今回はそこまで話を深めるのはやめておきます。
自立支援の大きな方向性として、規律正しく取り組む更生施設的ないわゆる「引き締める」ものと、自分の思考を広げる「緩める」ものとがあります。

ついついサボってしまうタイプには前者、真面目に考えすぎて動けなくなるタイプには後者が向いています。
どちらにも分類しにくい、中間的な施設ももしかするとあるかも知れません。

この二つの特性を同時に持つことはなかなか難しく、ニュースタートは完全に後者です。

ゆるくまったりしたこの雰囲気の中、人によって「引き締める」なんてことは、正直至難の業です。

この「引き締める」と「緩める」のどちらが我が子に必要なのかを見極めて、親は施設を選ばなければならないわけです。
この施設の「最短3ヶ月で自立支援」といううたい文句からは、「ゴリゴリ目の就労支援」という印象を私たちは受けます。

恐らくかなり「引き締める」方に特化した施設だったのではないでしょうか。

記事の親御さんの場合は、「緩める」べき人を、「引き締める」施設に入れてしまったように思います。

しかもこの記事に出てくる親御さんの言葉からは、親御さん自身にものりしろがなかった、のりしろという発想がなかったという印象です。
これでは、「緩める」施設の提案があっても、「そんなものは意味がない」と選択しなかった可能性もあります。

親の思う「人生の枠」からいかにはみ出して、自分の道を自分の力で歩んでいくか。
これこそが親離れであり、自立です。

父親の「子どもの頃からの再教育が必要」という言葉もありますが、親の枠をはみ出して自分にとっての仕事の意味を考えるほど、この人はきちんと育って来ていたように思います。

親の枠を本人は抜け出したかったのに、親が自分の枠に戻そうとしたこと。
本人も答えが提示できず、親の意向から逃れられる方法が見つからなかったこと。

これこそが、この人を追いつめたような気がします。

全ては短い記事からの推察ですから、合っているとは限りません。

こちらも相談を受けて何かしらの答えを出すには、やはり1時間程度、顔を見ながら話を聞くことが必要です。

ですが、この記事がただ「民間業者は怖い」「国や自治体の支援を」という反応で終わって欲しくない。

もっと亡くなったこの人の心情を考えてみて欲しい。
親が我が子に、そして自分の価値観にどう向き合うのかという、支援の手前の事柄があると知って欲しい。

そういう思いで、真実とは違うかも知れない、場合によっては記事の親御さんを傷付けてしまう、そんな危険性もあるこの文章を書きました。

この人が該当するかはもう分かりようがありませんが、こういう追いつめられ方をしているケースが存在するのは、まぎれもない事実です。

そのことだけでも、心に留めていただければと思います。

認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ 久世

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