引きこもり35歳の子どもに親が今すぐすべきこと

我が子が引きこもりになっているとき、親は様々のことを悩みます。
その中に、
「もう○○歳なのに・・・」
という気持ちはありませんか?

今、子どもが何歳になっているのか。
それによって、焦る気持ちや深刻さ、引きこもりからの脱出の難しさも変わってきます。

働いた経験もないまま35歳になってしまったなら、一刻の猶予もありません。
親はすぐに支援機関へ相談しましょう。

年齢で引きこもりの支援がどう変わるのか。
なぜ35歳なのか。
わかりやすくお話ししたいと思います。

この記事は2016年に公開したものです。現在は支援対象年齢が一部変更されているため、変更された年齢を加筆しました。
基本的に、40代以降の支援の難しさが変わるわけではないので、記事はそのままにしてあります。

引きこもり支援と就労支援が必要

35歳への引きこもり支援と就労支援

引きこもりからのゴールとはなんでしょうか。

  • 家から一歩外に出る
  • よく出かけるようになる
  • 話す相手ができる
  • 通う場所ができて自発的に行く

これが引きこもり支援のゴールでしょう。

でもこれで支援が終わりではありません。
最終的なゴールは「就労」、と多くの方が考えているでしょう。
ただし、単に仕事に就くというだけでは、親は安心できません。
せっかくバイトを初めても、すぐ辞めてしまう人が沢山います。
仕事が続いていたとしても、きつい仕事に潰されかかっていることもあります。

仕事をして自分の生活を支え、無理なく続けられる状況。
今いい人に出会えたら、結婚とか・・・と考えられるような状況。
これが親が本当に望むゴールではないでしょうか。
そのためには、就労支援が欠かせません。

引きこもりからゴールまでは、引きこもり支援就労支援のふたつが必要です。
そしてその支援は、年齢によって受けられないものがあるのです。

引きこもりからの脱出には、年齢制限がある!

年齢制限のある引きこもり

世間には、様々な引きこもり・就労支援があります。
国や県が運営する公的なものから、民間団体、個人まで。
支援の内容も、支援の対象も、様々です。

公的な支援機関やプログラムの多くは、年齢制限があります
ハローワークのように、全ての年齢の方が利用できる就労支援機関はもちろんあります。

ですが「ヤング」「わかもの」と名前がついた機関は、対象年齢は39歳以下、34歳以下などと書かれています。
例えば無料で就労相談が出来る「地域若者サポートステーション」は、はっきり39歳までと決まりがあります。
40代は登録すらできず、利用することができません。
30代から利用していても、40歳になったとたん利用できなくなります。

※(加筆)2020年4月より、地域若者サポートステーションの年齢上限が「39歳まで」から「49歳まで」に広がっています。
氷河期世代支援のための期間限定の措置だと思われ、今後変更される可能性があります。

40代も利用できる就労支援プログラムはありますが、多くは再就職者が対象です。
就労経験がない、または少なくて職務経歴書に書けるようなことがない、という人の支援が主ではありません。
そしてプログラムの数は、とても少ないと言えるでしょう。

29歳、34歳、39歳で支援が減っていく

使える引きこもり支援が減っていく

地域によって、設置されている公的機関は違います。
例として東京都の場合をお話ししましょう。

引きこもり支援では、「東京ひきこもりサポートネット」という機関があり、訪問相談を受けることができます。
これは都内在住のおおむね34歳未満の方が対象です。

※(加筆)「東京ひきこもりサポートネット」の訪問相談の対象者は、義務教育終了後の15歳以上、都内在住、6か月以上ひきこもりの状態が続いている、の全てを満たす人に対象者が拡大しました。

就労支援ですと、「東京しごとセンター」があります。
ここのヤングコーナーの対象は、34歳以下29歳以下です。
それを過ぎるとミドルコーナーの利用となり、54歳までの方とひとくくりになります。

しごとセンターは相談だけでなく、様々なプログラムがあります。
そのそれぞれに、年齢が設定されています。

例えば「ワークスタート」というプログラムは、34歳以下が対象です。
「若者正社員チャレンジ事業」の対象は、29歳以下になります。

都内に限らず、私たちが目にする中では、34歳以下というものが多いでしょうか。
正社員という言葉がつくと、29歳以下が中心です。
見つけられる一番高い年齢は、地域若者サポートステーションなどの39歳以下49歳以下です。

※(加筆)2020年4月より、地域若者サポートステーションの年齢上限が「39歳まで」から「49歳まで」に広がっています。
氷河期世代支援のための期間限定の措置だと思われ、今後変更される可能性があります。

このように、引きこもり支援は34歳未満に限られていて、就労支援も最高で39歳以下49歳以下

29歳、34歳、39歳と、だんだん利用できる支援が減っていきます
そして40歳になると、その年齢ならではの支援、というものはほぼ無くなってしまうのです。

民間団体の引きこもり・就労支援も、限界がある

民間の引きこもり支援団体

公的支援機関では、40代の支援は難しい。
では、民間団体はどうでしょうか。

民間団体は「支援できるのは○○歳まで」と決まっていることはあまりありません。
では、民間団体に頼めばいい、と思われるかも知れません。

民間団体には、それぞれの特徴や得意分野があります。

  • 10代の不登校・中退者支援が中心で、勉強も見てくれる
  • 20代・30代が多く、就労支援が支援内容の大半
  • 引きこもりが対象で、訪問が主な活動
  • 寮を持っていて、集団生活を経験させられる

ですが私たちが知っている限りでは、40代を得意分野としている団体は、覚えがありません。
40代も引き受けていたとしても、支援対象の中心は20代や30代であったりします。

40代の引きこもりが最近問題となっているのに、支援がないのはなぜか。
その理由は、「40代の就労が他の世代に比べて難しい」ということが大きいように思います。
支援してもなかなかうまくいかないから、取り組む団体も少ないのでしょう。

40代の支援を引き受けている民間団体はあります。
ですがやはり40代専門の支援は望めない、というのが現状です。

35歳が引きこもり支援のタイムリミット!

35歳が引きこもり支援のリミット

39歳までは利用できる支援がある。
なら39歳になるまで見守っても大丈夫。
そんな風に考える方も、もしかしたらいらっしゃるかも知れません。

ですがそこには、大きな間違いがあります。
大切なのは、

「39歳までに支援を終了すること」

なのです。

引きこもりの状態から相談に行き、すぐに就労までつながるわけではありません。
39歳で相談に行き、もたもたしているうちに40歳になってしまったらどうでしょう。
ゴールまでにはいくつものステップがあります。
引きこもり状態から仕事の定着までとなると、数年かかるケースは珍しくありません。

だからこそ35歳になったなら、すぐ支援機関に相談に行くべきです。
この年齢が、適した支援を受けられる最後のチャンスです。

35歳から支援を受けて、39歳までにゴールまでたどり着くようにしましょう。

複数の支援を利用する、と考えよう

複数の就労支援を組み合わせる

年齢を気にする理由が、もうひとつあります。
多くの親が、今の我が子の状態からゴールまで全てを支援してくれる所を探します。
ですがそんな所はなかなかないということです。

例えば引きこもり支援と就労支援では、やることが全く違います。
子どもの状況が変われば、必要な支援もどんどん変わっていきます。
全てを行ってくれる支援団体を見つけるのは、難しいでしょう。

我が子の状況に合わせて、複数の支援を使っていく
そういう考えを親が持っている必要があります。

  • 引きこもりなので訪問してもらう
  • 寮に入れて親から引き離す
  • キャリアカウンセリングを受ける
  • 支援団体の中で仕事の体験する
  • 企業で研修させてもらう
  • その企業での採用を目指して試用期間で働く

ワンストップでこれら全てを行うのではなく、複数の支援を使い分けていく。
そう考えたとき、使える支援は多い方がいいのです。

29歳、34歳、39歳と支援は減っていってしまいます。
ですから選択肢が多いうちに、相談に行きましょう。

引きこもりからゴールまで、4つのステップ

ここで、実際に支援機関に相談に行ってからの流れを考えてみましょう。

1.訪問でまず外へ

子どもが引きこもっているなら、まずは訪問支援です。
訪問を重ねながら、子どもを家から出していきます。

訪問を本人が拒否する、行けば会えるが頑なに外には出たがらない、といった場合もあります。

2.仕事への基礎作り

子どもが外に出られるようになったら、次のステップは就労の前段階です。
寮に入る、または支援の現場に通うなどして、仕事体験や人間関係の練習を重ねます。

全く働いたことがない、長く引きこもっていた場合は、このステップに長い時間がかかります。
働きたい気持ちを固めてもらう、技術をつける、自分の特性を知る、人とコミュニケーションを取りながら作業できるようにする、といった期間になります。

3.就職活動

その後は仕事探しとなります。
応募書類を作り、面接の練習をしながら、実際に就職活動をしていきます。

面接に行くのがこわい、応募の電話をするのもこわい、という人もいます。
なかなか面接に受からずに落ち込んでしまうこともあります。
本人の仕事への希望が現実的でなければ、切り替えをうながす必要もあります。

4.仕事の継続

そして仕事が見つかれば、いよいよ最終ステップの継続支援です。 
仕事や生活面のアドバイスをしながら、時には転職の支援をしながら、仕事と生活の安定に向けて支援していくことになります。

ゴールまではこのようにいくつものステップを通るので、当然ですが時間がかかります。
ですから、少しでも早く支援機関に相談するようにしてください。

仕事の継続が難しくなっている

特に最近は、以前に比べてバイトが見つかりやすくなっています。
ですが同時に、働き始めてからの問題も多くなっています。

問題が起こる理由は、大きく次の2つだと思います。

「2.仕事への基礎作り」が足りないこと。
例えば、寮できちんと人間関係を作れるまでいっていない。
社会の一般的なルールも身についていない。

「3.就職活動」が短いこと。
仕事を探す中で学ぶべきことが、学べていない。
自分の向き不向きも分からず、就労への自分の気持ちも定まっていない。

それでも、バイトの面接に行くと受かるのです。
そんな状態でバイトに行くのですから、働いていて起こる様々な問題に対処し切れません。
職場の人間関係に苦労したり、あっさり休んでしまったりもします。
言われたことを全て引き受けてしまい、ボロボロになっている場合もあります。

すぐバイトは決まるけれど、継続が難しい、というのが最近の傾向です。
就労がしやすくなったとは言っても、ゴールまでの時間はそんなに変わらないのです。

引きこもりからゴールまでは、長く時間がかかるのです。
35歳になったら、迷わずすぐに相談に行きましょう。
そして遅くとも39歳までにゴールに着くようにしましょう。

引きこもる我が子が40歳になってしまったら・・・

40歳引きこもり

ここまで、39歳に支援を終了というお話をしてきました。
では40歳を過ぎたらどうなるのかを、最後に少しお伝えしておきます。

40代になったとしても、できることがなくなるわけではありません。
40代を受け入れている民間団体や、年齢に関係なく使える公的支援を利用していくことになると思います。

支援によって状況を前に進めることは、もちろんできます。
ただし、ゴールをどこにするか、考えなくてはなりません。

ほとんど働いたことがなく、しかも長期間引きこもって40代になっていた場合。
完全な自立は難しい可能性が高くなります。
例えば働いているが親の仕送りや実家住まいが必要な、半自立がゴールになるかも知れません。

40代になってからでも、希望はあります。
目指すゴールを考えながら、ひとつひとつ前に進んでいってください。

まとめ

「39歳までに支援を終了すること」が大切

39歳までにニート支援を終了する

引きこもりの我が子が35歳になってしまったなら、一刻の猶予もありません。
親はすぐに支援機関へ相談しましょう。

引きこもり・ニートからの最終的なゴール。
それは仕事をして自分の生活を支え、無理なく続けられる状況ではないでしょうか。

ですから引きこもり支援とともに、就労支援が欠かせません。
公的な支援機関やプログラムの多くは、年齢制限があります。

ハローワークのように、全ての年齢の方が利用できる機関はもちろんあります。
ですが「ヤング」「わかもの」と名前がついた機関は、対象年齢は39歳以下、34歳以下などと書かれています。

例えば東京都だと、「東京ひきこもりサポートネット」が訪問してくれるのは34歳未満。
「東京しごとセンター」のヤングコーナーは、34歳以下が対象です。

しごとセンターのプログラムにも、それぞれ34歳以下や29歳以下といった対象年齢が設定されています。
全国で見ても、多いのは34歳以下、正社員への就労支援は29歳以下が中心、一番高い年齢は39歳以下49歳以下です。

29歳、34歳、39歳と、だんだん利用できる支援が減っていくのです。
そして40歳になると、その年齢ならではの支援、というものはほぼ無くなります。

民間団体は年齢制限があまりなく、40代の支援も引き受けていることはあります。
団体それぞれの得意分野がありますが、40代を得意分野としている団体は見あたりません

民間団体であっても、40代専門の支援は望めない

40代引きこもりの専門支援は望めない

民間団体であっても、40代専門の支援は望めない、というのが現状です。
39歳までは利用できる支援があるから、39歳になるまで見守ってもいいというわけではありません。

39歳までに支援を終了すること」が大切です。

引きこもり状態から仕事の定着までとなると、数年かかる可能性もあります。
35歳から支援を受けて、39歳までにゴールまでたどり着くようにしましょう。

子どもの状況が変われば、必要な支援もどんどん変わっていきます。
全てを支援できる団体はなかなかなく、複数を使い分けていく必要があります。

そのためには使える支援は多い方がいいのですが、年齢とともに利用できる支援は減っていってしまいます。
選択肢が多いうちに、まずは相談に行きましょう。

支援機関に相談に行ってからの流れ

引きこもり支援機関に相談に行ってからの流れ

実際に支援機関に相談に行ってからの流れは、このようになります。

  1. 訪問支援で家から引き出す
  2. 仕事への基礎作りとして、寮や通いで仕事体験や人間関係の練習を重ねる
  3. 就職活動をサポート
  4. 仕事の継続を支援

最近は仕事が見つかりやすいのですが、仕事が続きにくい傾向があります。
就労の前段階である人間関係の練習の不足や、就労への気持ちがあいまいなまま仕事を始めてしまうためです。

ゴールまではこのようにいくつものステップがあり、時間がかかります。
少しでも早く支援機関に相談するようにしてください。

40歳を過ぎると

40歳を過ぎた引きこもり

40歳を過ぎると、40代を受け入れている民間団体や、年齢に関係なく使える公的支援を利用します。
状況を前に進めることはできますが、完全な自立をゴールにできるか、考える必要があります。

親の仕送りや実家住まいが必要な、半自立がゴールになるかも知れません。
目指すゴールを考えながら、進んでいってください。

ニュースタート事務局スタッフ 久世

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執筆者 : 久世 芽亜里(くぜ めあり)

久世芽亜里

認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。

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