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孤独を感じない引きこもりと孤立していく家族

日本でも孤独・孤立対策が始まっている

ニュースになる「孤立・孤独」対策

孤独・孤立対策のニュース

「孤立・孤独」問題への対応に関するニュースを、今年はよく目にします。

私が最初に見たものは、2018年にイギリスが世界初の「孤独担当大臣」を任命したというニュースでしょう。
孤独というものに国が対策するんだ、という驚きが当時はありました。

そして今年、日本でも「孤独・孤立対策担当大臣」が任命されました。
イギリスに次ぐ、世界で2番目という早さです。
内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」も設置されました。

孤立と孤独はどう違うのか

そもそも「孤立」と「孤独」は、言葉としては似ていますが、与える印象はかなり違います。

孤立」は、周囲とのコミュニケーションがない状況を表す印象です。
それに対して「孤独」は、同じように周囲と断絶された状況を表すと同時に、「孤独感」という主観的な感情を表す側面が大きい印象があります。

孤独と孤立の違い

状況として孤立していても孤独感を感じない人や、逆にきちんと働いて人とのつながりもある(孤立していない)のに孤独感に苦しむ人もいます。
この2つのパターンだけでも、一つの対策では対応し切れないことは明白です。

状況か、感情か、それともその両方か。
日本政府はどこを対象に対策を考えるつもりなのでしょうか。

イギリスと日本、対象はどこ?

イギリスは孤独感への対処

イギリス政府が採用した「孤独」の定義は、

「人付き合いがない、または足りないという、主観的で好ましくない感情」
「社会的関係の質や量について、現状と願望が一致しない時に感じる」

という内容のようです。

日本のニュースサイトにあったものなので正確なところは分かりませんが、感情という単語も入っており、「孤独感」への対応を主眼に置いている感じがします。

日本の孤立・孤独対策

「社会的不安に寄り添い、深刻化する社会的な孤独・孤立の問題について総合的な対策を推進するための企画及び立案並びに総合調整に関する事務を処理するため、内閣官房に、孤独・孤立対策担当室を設置いたしました。」

対して日本の、内閣官房サイトの孤独・孤立対策ページには、冒頭に上記の文章があります。
日本政府の方が対象者は少しぼんやりしており、幅広く対応していきたいと考えている印象を受けます。
だからこそ「孤独孤立対策担当」と二つの単語を並べたのかも知れません。

孤立・孤独対策と引きこもり対策

引きこもりと孤立

この政策は一人暮らしのお年寄りから、親に頼ることができない子どもまで、幅広い対象者がいます。

孤立・孤独対策でよく耳にするニュースでは、引きこもりと関連づけられているものをよく目にします。
引きこもりは、孤立・孤独対策の対象に入るのでしょうか。

一般的なイメージとして、引きこもりは部屋に一人で閉じこもっていて、いかにも孤立し、孤独を感じていそうに思えます。
引きこもり当事者の中に孤立している人、孤独を感じている人は確かにいるのでしょう。

しかし、私たちがふだん支援の中で接している人たちは、正直なところ、孤立・孤独ではあまり悩んでいないように見えるのです。

また私たちが解決を目指すのも、引きこもりから自立など、具体的に次のステップに向かうことです。
孤立・孤独が、私たちが取り組むべき問題だとは、考えてもいませんでした。

前置きが長くなりました。
このブログでは、引きこもりの当事者や親御さんたちは孤立していて、孤独感を感じているのかを考えたいと思います。

引きこもりで悩む親の孤立・孤独

「家族という単位」で孤立している

ニートに悩む父親

まず、我が子が引きこもって悩んでいる親御さんについて考えてみます。
親御さんは、ある種の孤立状態にはあると言えます。

我が子が引きこもっていることは、近所や親戚に知られたくありません

どこにも相談をしていません

相談に行ったがうまくいかず、今は行くのをやめてしまいました


そんな親御さんが、かなりの数になるからです。

親御さんは社会生活を送っている以上、人間関係はあります。
ですが「我が子の引きこもり」という問題に関しては、コミュニケーションを取る相手が現在いない場合が多いのです。

「引きこもり問題」という側面では、そのご家族全体が社会から断絶され、宙に浮いています。
両親で話し合いをしているご家庭も多く、母親・または父親1人が孤立してるわけではありません。
ですが、家族という単位で社会から孤立しているような印象があります。

ここには適切な支援が必要でしょう。
ですがここで提示すべきは、「孤立への対策」なのでしょうか?

家族に必要なのは孤立対策?

自分の道を探す引きこもり

たいていの親御さんは、職場やご近所での人間関係はふつうにあります。
とても「孤立している」とは言えません。

ところが我が子の引きこもりのことになると、家族の他に話す相手がいなくなります
その理由は親御さんが問題を外に出したがらない場合と、一度は外に出したがいい解決策が得られず引っ込めてしまった場合とがあります。

相談するなどの手段で、引きこもり問題を外に出したがらない親御さんは、我が子の引きこもり問題について、自ら孤立しています。
同時に、本当に社会から孤立しているわけではありません。
ですから「孤立対策」として手を差し伸べても、手を取ることはないと思われます。

解決に向かって動いてみたものの、うまくいかずやめてしまった親御さんは、「良い引きこもり対策」が見つからずに、扉を閉じてしまった状況です。
この扉を開くのは「孤立対策」ではなく、「良い引きこもり対策」しかないでしょう。

孤立している親御さんへの対策は必要です。
ですが、その内容は行政が現在拡充を進めている「引きこもりへの対策」であり、新たな「孤立への対策」ではないのではないでしょうか。

家族の孤独感を和らげるには

使える引きこもり支援が減っていく

孤立の次に、親御さんの孤独感について考えてみます。

相談先がなく、周囲の理解がない、または我が子の話をオープンにしていない親御さんは、部分的に孤立していると同時に、孤独感も抱えていると思います。

ご夫婦で子どものことを話し合っているご家庭も少なくありません。
それでも、どうにもならない社会に、または一人ぼっちの我が子の将来を思い、孤独を感じていることでしょう。

ここには前項と同様に、引きこもりに関する支援が必要です。
それは引きこもりに関する信頼できる相談先や、同じように我が子の引きこもりで悩む親御さん同士のつながりなどになるでしょう。
やはり新たな「孤独への対策」などが必要とは思えません。

引きこもり当事者と孤立・孤独

相手がいてもコミュニケーションを取ろうとしない

親を無視する引きこもり

親御さんの次に、引きこもり当事者がどうなのかを考えてみましょう。

私たちが知る当事者は、親御さんが情報収集し相談にお見えになるなど、何とか我が子の引きこもりを解決したいと思っているケースに限定されます。
そんな彼等は孤立しているのでしょうか。

大半の当事者が親御さんと同居し、親御さんが金銭面のみならず、食事や洗濯など生活面でも面倒を見ています。
一人暮らしの場合も、親御さんが仕送りをしています。
そして常に彼らのことを気にして、「気持ちを話してくれないだろうか」などと、彼らの反応を待っています

つまり、こうした引きこもりの多くは「コミュニケーションを取る相手がいない」のではなく「目の前の相手とコミュニケーションを取ろうとしない」のです。
その理由は様々で、コミュニケーションを拒否する本人が悪いなどと言うつもりはありません。

ただそのような状況ですから、「彼らは孤立している」とは言い切れません。

孤独かなんてそもそも考えていない

引きこもりの仲間たち

そして、当事者の人たちが孤独を感じているかです。
私には、彼らが孤独感で苦しんできたと思えません

ただ私の感覚だけでは心もとないので、今私たちのところにいる利用者の皆さんに「家で引きこもっていた時に孤立・孤独を感じていたか?」といった質問をしてみました。
結果は、「特にはっきりした回答はなく、キョトンとした顔をしていた」でした。

私自身も引きこもり支援に携わる中で「孤独感」について考えることは特になかったのですが、おそらく利用者の皆さんもそうだったのでしょう。
自分が孤独だったか? そんなこと考えてもみなかった」という感じなのではないでしょうか。

もちろんこれが全員ではなく、聞いていくと孤独で苦しかったという人も中にはいると思います。
ですが多数派とはとても言えないでしょう。

私たちのところにいる引きこもり当事者は、孤立もしておらず、孤独も感じていない。
ここにニュースで見る内容との大きなイメージのズレを感じています。

引きこもりが孤独を感じていない4つの理由

ここからは私の想像ですが、孤独感がない理由に4つのことが挙げられます。

反抗する・無視する相手がいる

ニートの息子と話す

1つ目は、「実際には孤立していないこと」です。

引きこもっている当事者は、ほとんどが家族と同居しているか、金銭面などのサポートがあります。
仲良くするにしろ、反抗するにしろ、無視するにしろ、そこには必ず「相手」が存在します。

親子の会話があり仲良くしているケースが孤独でないのは当たり前です。
ですが何年も会話をしていないというケースでも、本人は親が寝静まった後に食事に出てくるなど、かなり親の気配を気にして生活しています。

親を避ける、反抗的になるという場合でも、常にその動向を気にする「相手」がいるのです。
これでは、孤独を感じる暇などはありません。

時間をつぶす技に長けている

ニートの生活

2つ目は、「何年も引きこもる人は時間をつぶすのに慣れていること」です。

孤独を感じるタイミングとして、何もないぽっかり空いた時間が挙げられると思います。
ある意味ずっとそんな時間を過ごしている彼らは、どんな風に過ごしているのでしょうか。

彼らから引きこもっていた当時の話を聞くと、引きこもり当初は色々と考えていたものの、どうにもできない現実にぶつかっています。
そしてだんだんとゲームなどに没頭していきます。

それはゲームが楽しくてではなく、「何も考えないようにする・思考を止める技」という印象です。
そういった技を身に付け、外からは何もないように見える時間を過ごしています。

そうやって時間をつぶすことに耐えられるからこそ、5年も10年も引きこもっていられるのでしょう。
空虚な時間が生まれそうになっても、何かでその時間を埋めるため、孤独を感じないのではないでしょうか。

比較する対象が近くにいない

孤独が不安

3つ目は、「孤立に近い状態だからこそ、逆に孤独を感じないのでは」ということです。

孤独感は、相対的なものだと思います。
例えば自分の部屋に一人でじっといる時よりも、学校や会社などで目の前の人の輪に入れない時の方が、孤独を感じませんか。

引きこもりの多くは、人間関係がうまく行かなかった経験があります。
その時は孤独を感じていたのではと想像しますし、引きこもることでそんな苦しみから自分を守っている場合もあります。

ある意味で孤立は、孤独感をシャットアウトするのです。
それでも本当に孤立してしまったら色々とあるのでしょうが、前述の通り、彼らが身を置いているのは本当の孤立ではありません。

一番の問題は他にある

正社員への道

最後の4つ目は、「彼らが一番何とかしたいのは、孤立や孤独ではないこと」です。

例えば人間関係で仕事を辞め引きこもりになった場合は、仕事をしていた当時は孤独感もあったかも知れませんが、今は働いていない現実の方が問題です。
感情論ではなく、具体的にどうにかしないといけないものが目の前にあります。
人間関係が課題だとしても、そのゴールは孤独感をなくすことではなく何とか働いていけるようになることなのです。

私たちの支援を受け、今は自立している卒業生にも孤立・孤独について質問したところ、

それどころじゃないというか、そういう問題じゃないというか……

自分には全く思い当たるところがない、孤立・孤独というのはピンと来ない

という回答が返ってきました。

やはり、自らの引きこもりに悩んでいた当時、目の前にあった問題は、孤立・孤独とは全く別のものだったようです。

更に

孤立、孤独はぜいたく品というか(笑)

いう言葉もありました。
彼の感覚では、孤立・孤独について悩めること自体が、社会に出られないなど具体的な悩みが解決した先にあるのもののようでした。

社会生活を送れてやっと孤独感が問題になる、というイメージなのでしょう。

孤立・孤独対策は引きこもりを救うのか?

第三者が支援する

私は孤立・孤独と引きこもりとの紐づけを否定するつもりはありません。
引きこもりには家族とも離れ本当に孤立している人や、孤独感に苦しんでいる人もいるのは間違いないでしょう。

私がこのコラムで伝えたいことは、下記の一文に尽きます。

私たちが知る引きこもりの人たちは、孤立・孤独対策と言われても、他人事としかとらえず支援を受けはしないだろう

私たちがふだん主に接しているのは、我が子を心配し相談に行くような親と同居する、または生活費を出してもらっている人たちになります。
彼らは本当の孤立はしていませんし、孤独を感じてはいません
それとは別の目下の問題がありますから、孤立・孤独に関する支援は受けないでしょう。

そして親御さんですが、家族という単位での孤立や、孤独感はあると思います。
支援は必要ですが、適切なのは「引きこもり支援」であり、現在進めている引きこもり支援の拡充がポイントになると思います。

孤立・孤独対策によって、確かに一部の引きこもりを救うことはできる。
でも世間が思っていたほどは効果が上がらない。
せっかくの動きがそのような結果になっては、もったいないでしょう。

日本の孤立・孤独対策は、まだ始まったばかりです。
いい方向に進むことを願っています。

執筆者 : 久世 芽亜里

久世芽亜里

認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。

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