ひきこもり・ニートの若者講演会「働けなかった僕たちの本音」を行徳センターにて開催しました。
その中で今回は、集中訓練プログラムに参加していたSくんの話を抜粋しました。
(集中訓練プログラムとは・・・
地域若者サポートステーションが主催するプログラム。
ニュースタート事務局が運営する「いちかわ・うらやす若者サポートステーション」では、3ヶ月間の合宿型プログラムを実施。
寮に滞在し、生活訓練、職業訓練、座学などを行う。
年齢や状況などサポートステーションの対象者のみが参加でき、国からの助成金が出るため安価で参加できる。)
--まず名前と年齢をお願いします。
Sです。
38歳です。
--集中訓練プログラムに来た経緯、きっかけを話してもらえますか?
弟がいるんですけど、弟が心配して、探してきた集中訓練プログラムの説明を一緒に聞きに来て。
僕はその時話を聞くだけで帰るつもりだったんですけども。
スタッフの方と話をして、一か月後に就職、バイトでもなんでもいいから働いてなかったらこのプログラム参加しようと期限を決められて。
今までずっと働いてなかったのに急に一か月で決まらないなぁって思ったので。
その時の勢いもあって、その場で「そのプログラムに参加します」と言ったのがきっかけです。
--説明会に来るまで、いろいろ動いてはいたんですか?
いや動いてないです。
就職に向けてですよね?
動いてないです。
--じゃあ説明会に来ようって重い腰が上がったのは、何か理由があるんですか?
もともと参加する気はなく、話だけを聞くつもりだったんで。
話を聞くだけでいいよって。
--話を聞くだけだからって来たら、参加させられそうな方向に持っていかれた(笑)
持っていかれて参加することになっちゃった(笑)
--弟さんは、どうして心配してたんでしょう?
長い期間働いてないのと。
弟自身も結婚をして子供も生まれて、それも一段落して、自分のことだけじゃなくて僕のことに気をかけてくれる余裕ができたみたいで。
僕の知らないところで動いてくれていたみたいで・・・
そんな気を使って時間を割いてくれてたんなら、話だけは聞きに行ってみようかなって。
--久々のちゃんとした外出でしたか?
そうでもないです。
外には頻繁に出ていくほうなので。
趣味散歩なんで。
--8年間ニート状態とプロフィールに書いてあるんですけど、その間たまに外出してた?
河川敷をよく1時間2時間散歩することがあったんで。
外出すること自体に苦はまったくない。
--友達と出かけるとかありました?
ありました。
飲みに。
友達みんな働いてるんで、昼間の時間は会えないですけど。
--お金はどうしてたんですか?
働いてないのを相手は知ってるんで、おごってくれたり。
そうじゃない場合は親に。
--親御さんに言えば、ちょっとはくれた?
外出する機会が多かったので、何かあった時のために持たせてくれて。
まとまった額、一万円とか、それでやってました。
--以前働いていた時は、パワハラみたいなのはあったの?
他の部署の顔色をうかがって、部下に対しては大声で怒鳴り散らすのに、他の部署の人達には優しいみたいな。
そういうのはありました。
--そういうのに耐えきれなくなった?
そうですね。
--寮生では上司とケンカして退職してきた人もいましたけど、そういうのではなくて?
ケンカは無いです。
一方的に嫌になって・・・
--その後、再就職はうまくいかなかった?
2・3回面接でうまくいかなくて。
貯金もあったから、とりあえずのんびりしちゃおかな・・・みたいな感じで。
仕事辞めた時も、あんまり後先を考えずに、感情だけで行動してましたね。
--それは直したいなと思いますか?
それともこれは自分の性格だからしょうがないと?
しょうがないですね。
楽観的に考える。
どうにかなると思ってるんで。
--ここに来ていろいろと外部の職業体験やってるから、今は何とかなってますよね。
すごく忙しそうですよ。
--今日、講演会があるから、せっかくの休みが無くなっちゃって。
2週間ぐらい何かしらスケジュールが埋まっちゃている。
そんな感じです。
--その忙しさっていうのは自分としてはどうでしょう。
忙しくしたかった?
ずっとダラダラ過ごしてたんで。
何かやらなくちゃいけないことがあっても、まあ明日やればいいやって感じで過ごしてたのが、今は予定が埋まっちゃてるんで。
空いた時間にちゃんとやる事やらなくちゃいけないってなってる。
--今はけっこう新鮮な生活を味わってる?
新鮮て言うか、懐かしい感じ。
1回働いてるんで。
--2年間していた仕事の感じと似てますか?
2年間もそうだし、その前に専門学校の時もバイトしながら学校行ってたんで。
懐かしい。
忙しいのが肌にってる人はいいんですが、忙しくなくちゃだめだみたいな風潮は、ニュースタートとしては違うんじゃないのかなって思っていて。
それぞれのペースにあった仕事があるんじゃないかなと思います。
--ニート状態の時、親から何か言われました?
体の病気で入院して手術して大変だった時があるから体を大事にしてねって感じだったのかな。
親が友達親子型がすごい強くて。
嫌われたくないから強く言わないって感じがあったんで。
甘えられる状況があったんで、そのまま行ってしまった。
--自分としてはどの型だと思いますか?
僕はなんとなく型です。
問題先送り型。
甘えられる状況があったので、甘えていたらこうなった。
--(来場者からの質問)そんな親に対して、当時どう思ってましたか?
病気もそろそろ癒えてきて、そろそろ再就職してもいいんじゃないかって時、申し訳ないなって・・・
金銭的にずっと負担をかけているんで。弟はちゃんと働いて自立しているんで。
--親からは何か言われましたか?
「なんでもいいから働いてほしい」
--そう言われた時どうしてましたか?
流してました。
--(来場者からの質問)家庭内で会話が無い、会話をしてこれからどうするかとか話して、動かしていきたいんですが。
外部の人と接触は?
--ないです。
家族間では多分動かないです。
外部の力をまずは借りるほうがいいと思う。
(スタッフより返答)
会話じゃ動かないとニュースタートでは考えていますし、これまでの経験ではそうでした。
会話で動かさないので、行動で動かすしかないです。
とにかく会話をするようになりたいと思わないほうがいいですし、叶わないと思います。
本人はそれをうざったいと思っているわけで。
離してあげた方が、うざったくない環境に押し出してあげた方がいい。
「これからどうするのって話したいのに、会話が出来ない」っていう相談が多いんですけど。
その状態で1年ぐらい経ってるなら、無理じゃないですかって思うんです。
親が向き合おうとすればするほど子どもは嫌なんです。
だって親は正論を言ってくるわけだし。
正論を論破することは出来ないじゃないですか。
親の言ってくることは分かるけど、どうしょうもないのを言ってもしょうがない。
言ってもしょうがないなら、黙るしかない。
だから申し訳ないなと思っていても、そのままの状態でいちゃう。
やっぱり打開するには、距離を置いてもらうことも必要です。
現在のSくんは、無事にプログラムを終了。
プログラム内で職業体験をさせてもらったスーパーに、そのまま採用されました。
職場では人にも恵まれて、仕事も続いています。
「友達親子型」や「なんとなく型」というのは、ニュースタートがニート・引きこもりを4つに分類する時に使う言葉です。
当日は体験談の前に、4つの説明やそれぞれの対処法もお話しました。
最後の来場者からの質問は、よく出る質問だと思います。
私たちニュースタートは、「我が子がいきなり動き出すような、魔法の言葉はありません」と、常にお答えしています。
親子の会話がないままでも、子どもを動かすことはできます。
そのやり方が分からないなら、Sくんが言うように「外部の力を借りる」ことを考えてください。