「子どもがひきこもったのは自分の育て方のせいではないか」と、過去の原因を探して悩む親御さんは少なくありません。
しかし、ひきこもり問題の解決において、過去の「きっかけ」に囚われすぎることは、かえって解決を遅らせる原因になります。
大切なのは、過去の原因探しではなく、現在の「状態」に目を向けることです。
この記事では、内閣府のデータをもとにひきこもりの本当の原因を整理し、状態が数年も続いてしまう「固定化の仕組み」と、そこから抜け出すための具体的な解決策について解説します。
目次
ひきこもり問題を考える際は、入り口となった「きっかけ(原因)」と、その状態が続く「固定化(要因)」の2つに分けて捉える必要があります。
まずは、入り口である「きっかけ」について、内閣府の調査データを見てみましょう。
内閣府の平成28年調査によると、若い世代のひきこもりの主なきっかけ(同率1位)は以下の通りです。
これに就職活動の失敗や人間関係の不和を含めると、仕事関連が約35%、学校関連が約28%を占めています。
一方、平成31年の調査(40代〜60代対象)では、最も多いきっかけは「退職したこと」です。
職場になじめなかったことや就職の失敗を合わせると、全体の約62%が「仕事関連」の理由でひきこもり状態に至っています。
過去の不登校などの学校関連は11%に留まります。
これらの調査結果を見てもわかる通り、ひきこもりのきっかけは、本人の気質、学校、職場、社会環境などが複雑に絡み合ったものです。
そのため、当事者である本人ですら、原因を一つに特定できないケースが一般的です。
原因のなかに家族との関係が含まれていることはあっても、「親の育て方だけが原因」というケースは極めて稀です。
まずは過度な罪悪感を手放すことが大切です。
ひきこもり始めてから「半年から1年」を過ぎると、問題は「きっかけとなった原因」から、別の「継続・固定化の要因」へと移行します。
そして、この長期化の要因には、親御さんの対応が深く関係しています。
多くの場合、ひきこもっているお子さんの生活(同居による食事の提供、一人暮らしへの仕送りなど)を支えているのは親御さんです。
親御さんとしては「今は見守るしかない」「本人の意思を尊重しよう」という判断によるものですが、結果として「社会に出なくても生活が維持できる環境」が作られている側面があります。
この環境が維持されている限り、本人が自発的にひきこもり状態から抜け出すことは難しくなります。
ひきこもりを解決しようとする際、多くの親御さんは「どうすれば本人の苦手意識が消えるのか」「仕事への恐怖心をなくせるか」といった、過去のきっかけ(本人の内面)を先に変えようとします。
しかし、人間関係の克服や失敗への恐怖に向き合うには大きなエネルギーが必要であり、本人が時間をかけて取り組むべき課題です。
正しい順番は、「まず固定化の要因(現在の環境)を取り除き、動かざるを得ない状況を作ること」です。
環境が変わって初めて、本人は過去のつまずきやこれからの課題に向き合うステップへと進むことができます。
本人の内面を親が無理に変えることはできませんが、「現在の環境を見直すこと」は親御さんの判断で進めることができます。
「本人がその気になるまで待つ」のをやめ、家族としての対応を変えていきます。
生活の面倒を見る範囲を段階的に縮小するなど、依存関係を解消していくことが大切です。
実家という「甘えや慣れが生じやすい環境」から離れることも有効な選択肢です。
寮生活や一人暮らし、あるいは親が家を出るなどして環境を物理的に分離することで、固定化の要因を根本から取り除くことができます。
生活の保証がなくなり、本人が「社会に出るしかない」と考え始めたタイミングで、初めて親のサポートが活きてきます。
ハードルの低い職場や、短時間のアルバイト、人間関係が穏やかな場を提案するなど、子どもが小さな成功体験を積める環境を後ろからそっと支えてあげてください。
ひきこもり問題において、親御さんは「過去のきっかけ」の直接的な原因ではないことが多いですが、「現在の長期化」には環境として関わっています。
長年のひきこもりから脱出するために必要なのは、過去を反省することや、親子関係の改善をゴールにすることではありません。
まずは「ひきこもり続けられる環境」を見直すこと。そこから自立への歩みが始まります。
家族だけで抱え込まず、環境を変えるために専門の支援機関を頼ることも検討してください。
認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。
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